月曜の朝。週次の売上をまとめる時間です。
店舗ごとの数字をAIに貼って、「店舗別に合計して」と打つ。
数秒で、きれいな表が返ってきました。
これで課長に送れる。そう思いつつ、念のため電卓を叩いてみる。
合計が、合わない。
「え、どこが違うの…?」
そんな経験、ありませんか?

ただの足し算なのに。これじゃ怖くて、数字は任せられません。
安心してください。あなたの確認が甘いわけではありません。
変えるのは、AIに頼む中身だけです。
今日は、数字をAIに任せても慌てずに済む頼み方と、その場でできる確かめ方をお伝えしますね。
送る直前に、合計が合わないと気づいた
フリーのライターとして、月末に請求の集計をしていたときのことです。
取引先は6社。その月に納品した原稿は、20本ほどありました。
原稿料の明細をまとめて、AIに貼りました。
頼んだのは「取引先ごとに合計して」の一言だけ。
返ってきたのは、取引先名と金額がきれいに並んだ表でした。
「AIって、こういうの得意なんだな」
そのまま請求書に写そうとして、ふと手が止まります。送る前に、一度だけ電卓で確かめておこう。
結果は、15,000円のずれ。
明細と見比べると、1社の原稿料が1行、表から抜けていました。
抜けていたのは、月の初めに納品した1本。そのまま送れば、その会社に間違った額の請求書が届くところでした。
「あのまま送っていたら…」
背中が、すっと冷たくなりました。信頼で仕事をもらうフリーランスにとって、請求の間違いは小さな話ではありません。
それからしばらく、数字だけはAIに触らせなかったんです。
あとで分かったのは、「AIに頼む仕事を取り違えていた」ということでした。
AIが数字を間違えるのはなぜ?
チャットのAIは、文章や表を整えるのが得意です。
取引先名を並べて、金額に3桁のカンマを付けて、合計の行まで作ってくれる。見た目は、文句のない表が返ってきます。
でも、その合計は、1行ずつ足した数字とは限りません。
あの日のあと、試しに同じ明細で3回頼み直してみました。出てきた合計は、3回とも違う数字でした。
「ちゃんと計算してるんじゃないの?」
AIによっては、裏で計算用のプログラムを動かして答える機能もあります。ただ、いつもの会話で頼んだ合計が、その計算を通っているとは限りません。
つまり、あなたの注意力が足りないわけでも、AIが使えないわけでもない。
計算という仕事を、計算の道具ではない相手に頼んでいた。それだけなんです。
このブログでは、AIを「今日が初日の新人」にたとえてきました。
頭はよくて、清書もきれい。そんな新人に、6社分の請求額を暗算で足してもらいますか?
たぶん、電卓を渡しますよね。
AIにとっての電卓が、Excelです。新人には電卓の叩き方を考えてもらい、計算そのものは電卓に任せる。AIにも、同じ分担を頼めばいいんです。
AIには、答えじゃなく式を聞く。計算はExcelに任せましょう。
今日から使える「式だけ聞く」
やることは、AIに頼む中身を「答え」から「式」に変えるだけです。
- データは貼らず、列の名前だけ伝える。
- 「〔店舗〕ごとの合計を出す数式を教えて」と頼む。
- 返ってきた式をExcelに貼り、計算はExcelに任せる。
- 元の金額の列を選び、画面右下の「合計」と見比べる。
AIが式を考えるのに、中身の数字はいりません。どの列に何が入っているかが分かれば、式は書けるんです。
列の名前だけなら、行が何百あっても頼み方は変わりません。来週データが増えても、同じ頼み方がそのまま使えます。
頼み方の例
導入の、週次の売上を例にしましょう。店舗ごとの合計を出したいなら、こう頼みます。
Excelで、〔店舗〕ごとの〔売上金額〕の合計を出したいです。
表の列は次のとおりです。データそのものは貼りません。
A列:〔日付〕/B列:〔店舗名〕/C列:〔商品名〕/D列:〔売上金額〕
使う数式と、どのセルに入れればいいかを教えてください。
〔 〕の中は、あなたの表に合わせて書き換えてください。
返ってくるのは、たとえばSUMIFS関数を使った式と、それを入れるセルの場所です。
関数の名前を知らなくても大丈夫。式をコピーして、言われたセルに貼るだけ。
計算するのはExcelなので、何回やり直しても同じ合計が出ます。3回とも違う数字が出た、あの日のようなことは起きません。
式の意味が気になったら、「この式を、Excelが苦手な人向けに1行ずつ説明して」と続けて聞いてみてください。
会社のExcelでCopilotが使えるなら、「店舗ごとの合計を出す列を、数式で作って」と頼む形もあります。そのときは、できたセルをクリックしてみてください。上の数式バーに「=」から始まる式が出ていれば、計算はExcelがしています。
右下の「合計」で確かめる
最後は、出た合計が正しいかの確認です。
使うのは、Excelの画面の右下にある「ステータスバー」。数字の入ったセルを2つ以上選ぶと、そこに平均・データの個数・合計が出ます。関数はいりません。
確かめ方は、2回選んで見比べるだけです。
- 元の表の、売上金額の列を上から下まで選ぶ。右下の「合計」を覚えておく。
- 式で出した店舗ごとの合計のセルを、まとめて選ぶ。右下の「合計」が、さっきと同じならOK。
ずれていたら、まず2つを疑います。
1つ目は、店舗名の書き方のばらつき。「本店」と「本店 」のように、空白が1つ違うだけで、別の店として扱われます。
2つ目は、式の範囲。表の最後の行まで、式の範囲に入っているかを見てください。
私はいま、請求書を送る前に必ずこれをやっています。選んで、右下を見るだけ。電卓で20本分を打ち直していたころより、ずっと早く終わります。



右下の合計なら、Excelが苦手な私でも見られそうです。
毎週の集計を「型」で片づける
列の名前を伝えて、式を聞いて、右下で見比べる。今日の集計は、これで乗り切れます。
ただ、毎週の仕事にすると、次の壁が見えてきます。
「商品別×店舗別みたいに、2つの軸で集計したいときは?」
「ピボットテーブルの手順まで、AIに出してもらえる?」
「毎週、同じ頼み方を打ち直すのが面倒」
私も、ここで止まりました。請求を取引先別・月別に分けたくなったとたん、頼み方がうまく組めなかったんです。
そこで、集計の頼み方も、ほかの仕事と同じ「型」にしました。いまは、空欄を埋めて貼るだけです。
その型を、議事録やメールの型とまとめて、1本のnoteにまとめています。
- 週次集計のコピペ用プロンプト(データを貼らずに、関数かピボットテーブルの手順と、確かめ方まで出させる型)
- 議事録・取引先メールの、コピペで使えるプロンプト
- 1回目の出来がいまいちなときの、3行の「直し方の型」
- うまくいったプロンプトを使い回す「プロンプト帳」
こんな人に向けて書いています。



Excelが苦手で、週次の集計に半日かかっている。



AIの出した数字が怖くて、任せきれない。



帰る時間が決まっていて、残業で取り返せない。
定時に帰るためのAI実務プロンプト集|議事録・メール・週次集計を仕組みで片づける【コピペ用】
頼み方と直し方は、このシリーズの前の2本にまとめています。




まずは今日、AIが出した合計を1つだけ、右下の「合計」と見比べてみてください。
合っていれば、安心して使えます。ずれていたら、それが「式だけ聞く」に切り替える合図です。
計算はExcelに任せて大丈夫。あなたは、式の聞き方だけ覚えておけば十分ですよ。






